阿里巴巴_-_Google_検索

中国人のインターネット取引を牛耳っているらしい阿里巴巴(アリババ)のサービス毎のシェアを見たら本当に牛耳っていた。

にーはお!中国スタートップ、インターネット業界を牛耳るBATについて解説していきます。前回のを読んでいない方は、先に目を通しておくことをお勧めします。

→「中国スタートアップ 三国志(1)〜エコシステムを構築するBAT〜

→「中国スタートアップ 三国志(2)〜検索を軸に成長するも、O2Oに乗り遅れた百度(バイドゥ)〜

 

今回は阿里巴巴(アリババ)です。創業者のジャック・マーが日本で言うところの孫正義みたいな人物で、中国で最も尊敬されている起業家の一人です。最初にまとめを。

要点

 

  • インターネット上の取引は、B2B、C2C、B2C、決済で圧倒的に強い。
  • その基盤を生かして、コンテンツ領域への投資が盛ん。
  • SNSやメッセージ系は強くなく、他社へ出資している。

 

具体的な数字を基に、阿里巴巴(アリババ)の事業を見ていきます。

淘宝(Taobao)

 

淘宝(Taobao)は2003年にローンチした、C2Cの購買プラットフォームです。

当時eBayの資本が入った易趣(Yiqu)が広っていましたが、淘宝(Taobao)は後発ながらも易趣(Yiqu)を圧倒し、2006年には中国より実質的に撤退させました。易趣(Yiqu)は手数料などの利用料金を求める一方、淘宝(Taobao)は無料でプラットフォームを開放し、中国人のニーズに適した機能を取り込みました。

その顕著な例が2004年に導入されたエスクロー型の決済システム支付宝(Alipay)です。 エスクローとは買い手と売り手の間に第三者の仲介者が入り取引をすることを言います。

C2Cの取引には悪徳業者が紛れ込むことが問題とされていましたが、買い手が仲介者に入金した後、売り手は買い手に商品を発送、買い手は商品受領後に問題が無ければ売り手に入金するよう仲介者に依頼することを可能にし、タオバオの信頼度を高めました。(しかも無料で提供。)

他にも買い手と売り手がチャットでコミュニケーションを取ることができるようにするなどの施策を実行しました。

淘宝(Taobao)は現在中国のC2C取引における96.5%ものシェアを誇るまでに成長しています[1]

 

図1 中国C2Cサイトのシェア(2013年12月)

 

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阿里巴巴(アリババ)

 

アリババ・グループの中でジャック・マーが最初に育てた主力事業です。

当時、B2Bのeマーケットプレイスでは、成功報酬型の収益モデルが一般的でしたが、阿里巴巴(アリババ)は無料で登録企業を募り、「一部有料会員」というフリーミアム方式を採用しました。2015年Q1でのB2Bオンラインビジネスのシェアは2位の慧聪网(Huicong)5.1%を大きく引き離し、46.6%のシェアとなっています[2]

 

図2 B2Bサイトのシェア(2015年Q1)

 

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天猫(Tmall)

 

天猫(Tmall)は高品質、高付加価値な商品を求める中国の消費者を対象に2008年に設立された、B2Cのプラットフォームです。

上述した淘宝(Taobao)は2006年に易趣(Yiqu)を中国市場より実質的に退場させ、中国C2C市場をほぼ独占しています。しかし決済ツール、取引手数料、出店料の全てを無料で提供しており、収益化に苦しんでいました。

そこで市場を急速に伸ばしていたB2C市場に注目し、通常のサイトと同じく出店料や決済手数料を採るB2Cモデルのプラットフォームをスタートさせました。シェアは2015年Q1時点で、58.6%、京东(JD)の22.8%、唯品会(Weipinghui)の3.8%[3]を引き離しています。

 

図3 B2Cサイトのシェア(2015年Q1)

 

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支付宝(Alipay)

 

現在モバイルでは77.2%と阿里巴巴(アリババ)の強豪である腾讯(テンセント)系列の财付通(Caihutong)の13%に圧倒的大差をつけて[4]、中国インターネット・エコシステムの中核を担う決済を完全に掌握しています。

補足として書いておきますが、日本と違い、中国におけるネットでの決済はクレジットカードではなく、エクスロー決済が主流です。リアルでも支付宝(Alipay)での支払いが進んでいます。現金を持ち歩かなくても中国では生活できます。

 

図4 モバイルにおける第三者決済サービスのシェア(2015年Q1)

 

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以上が阿里巴巴(アリババ)の主力事業ですが、中国人のインターネットにおける取引と決済をほぼ完全に握っているといって良いでしょう。

阿里巴巴(アリババ)の基本戦略は、自社の決済をさらに使ってもらうために、様々なエンターテイメントを自社で用意することと、サービス内容をレストラン口コミサイトなどの決済の周辺にまで拡大することの2つということになります。

 

図5 アリババの領域別投資件数と投資金額(2014年度)[5]

 

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IT桔子がまとめた2014年度の阿里巴巴(アリババ)の出資・買収企業の一覧では、投資総額は170億ドルとなっています。その中で阿里巴巴(アリババ)が2014年度に最も投資した領域は、件数から順にエンターテイメントへ10件(30億ドル)、ECへ6件(3億ドル)、モバイルへ3件(54億ドル)、ライフスタイルへ3件(30億ドル)、SNSへ3件(3.5億ドル)です。

投資金額ではモバイルが54億ドルと最大あであるものの、エンターテイメントへの10件の出資・買収は目を見張ります。

日本円にして約4,800億円で、GREEとDeNAの時価総額を足したものを上回る規模です[6]

テレビ番組や映画製作を行う北京拠点のスタジオ华谊兄弟传媒集团、広州拠点のサッカーチーム广州恒大足球俱乐部に1億9,200万米ドルを出資[7]、中国最大の動画共有サイトで米国のユーチューブとネットフリックスを組み合わせたようなサービスを提供する优酷土豆(Youkutudou)の株式を2015年11月に完全買収にすることで合意にしています[8]

 

図6 アリババが2015年度戦略的買収した企業のハイライト[9]

 

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図6はアリババ・グループの2015年3月期の決算報告書のM&Aに関する部分抜粋したものです。エンターテイメント事業を「エコシステム・コンテンツ・ディストリビューター」の3分野に分けてその意図が株主に分かるように記述していることからも、阿里巴巴(アリババ)がエンターテイメント事業への戦略的買収を重点に置いていることがわかります。

エコシステムにあたる阿里影业(AlibabaPictures)は阿里巴巴(アリババ)が2015年3月に文化中国伝播の株式60%を8億500万ドルで取得し名称を変更したものです[10]。阿里影业(AlibabaPictures)は2015年6月に121億香港ドルを調達すると発表するなど多額の資金をエンターテイメント事業の補強のために投資しています。

これらの投資は阿里巴巴(アリババ)が自社サービスを魅力的に見せるため、言わば強みを補強するための投資であると言えるでしょう。魅力的なコンテンツを配信し、天猫(Tモール)と連携させて関連商品を買ってもらう、映画などのチケットを支付宝(Alipay)を使って予約決済してもらうのが狙いです。

それでは、上記以外での阿里巴巴(アリババ)の投資戦略はどのようになっているのでしょうか。阿里巴巴(アリババ)が弱みを補強するために投資している事例を見てみます。

 

図7 インスタント・メッセンジャーのPC上でのマーケット・カバレッジ[11]

 

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図8 インスタント・メッセンジャーのモバイル上でのマーケット・カバレッジ[12]

 

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図7と8を見れば、腾讯(テンセント)が所有する微信(Weixin)とQQが中国国内のチャットアプリとして絶対的な力を持っているのが分かります。PC上では阿里巴巴(アリババ)の旺旺(Wangwang)も20%台で検討していますが、モバイルでは4%と惨敗です。

このような状況で、阿里巴巴(アリババ)は腾讯(テンセント)にどう対抗しているのでしょうか。

2015年6月時点で2.12億人のMAUを持ち[13]、短文投稿サービスにおいて約80%のシェアを占めている[14]中国版Twitter微博(Weibo)の株式18%を5億8,600万ドルで取得しています[15]

阿里巴巴(アリババ)は微博(Weibo)と戦略的出資をすることで、微信(Weixin)やQQと対抗するという明確な狙いを持っているのです。

 

図9 短文投稿サービスのシェア(2014年)

 

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さらに2015年2月9に中国の新興スマホメーカー、魅族(Meizu)に5億9,000万ドルを出資すると発表しています。微博(Weibo)への出資はスマホ上での入り口を抑える動きでありましたが、魅族(Meizu)への出資はその一歩手前の入り口を確保するとともに、独自開発の基本ソフトを普及させることで、ネットサービスのプラットフォームを握りたい阿里巴巴(アリババ)の狙いがあります[16]

 

まとめ

 

以上、阿里巴巴(アリババ)が自社のエコシステムの強みを強化する動きと弱みを補強する動きを見ました。

国内で狙える市場は全て進出しながら、海外への投資とサービス展開をしていくのが阿里巴巴(アリババ)の方向性だと思いますが、海外のサービス展開はあまりうまくいってないようです。

ただ国内に目を向ければ、中国でインターネットにつながっていない人はまだ約6億人いるので、その市場を取れるかが阿里巴巴(アリババ)がさらに成長できるかの命運を握ると言えるでしょう。

 

今は配信するための「コンテンツ」が喉から出るほど欲しいはずので、日本へのコンテンツホルダーの大型買収もありそうです。

改めて各サービスのシェアを見ましたが、阿里巴巴(アリババ)はネットでの取引は本当に強いなと思い知らされました。

 

 

参考

アリババを25兆円企業にした「大フリーミアム」モデルは、競合と何が違うのか?~「ビジネスモデル全史」【特別編1】

[1]崔保国主編『伝媒蓝皮書』社会科学文献出版社、2014年、226頁。

[2]2015Q1中国電子商務各細分行業発展情况

[3]2015Q1中国電子商務各細分行業発展情况

[4]艾瑞:2015Q1第三方移動支付規模達20015.6億元

[5]IT桔子2014年度盘点系列(1):BAT+3M巨頭的布局(TABLE派系)

[6]2015年9月29日現在、GREEとDeNAの時価総額はそれぞれ1270億円と3368億である。

[7]Alibaba buys 50% stake in Chinese soccer team for $192 million

[8]アリババ、中国の動画サイトYouku Tudouを買収へ

[9]March Quarter 2015 and Full Fiscal Year 2015 Results

[10]アリババ、映画産業に進出か―アリババ・ピクチャーズ設立

[11]中国移動IM雲産業専题研究報告2015

[12]中国移動IM雲産業専题研究報告2015

[13]Weibo Reports Second Quarter 2015 Results

[14]微博:市场呈集中化趋势,微博客走向成熟

[15]Alibaba Buys 18% Stake in China’s Twitter-Like Weibo

[16]Alibaba Group Announces US$590 Million Strategic Investment in Meizu

投稿者:

家田昇悟(IedaShogo)

在学中に中国の日本酒コンサルティング会社で、営業・ECサイト立ち上げのリサーチを経験。帰国後、中国のスタートアップに特化した情報サイト「ChinaStartupNews」を立ち上げ、中国関連のリサーチやコンサルティングに従事する。中国×スタートアップに興味を持つ人が集うFBグループ(https://www.facebook.com/groups/chinastartup/)を運営し、現在参加者は800名を超える。アプリ開発企業にて勤務。