中国スタートアップ 三国志(2)〜検索を軸に成長するも、O2Oに乗り遅れた百度(バイドゥ)〜

にーはお!前回に続き、中国スタートップ、インターネット業界を牛耳るBATについて解説していきます。前回のを読んでいない方は、先に目を通しておくことをお勧めします。→「中国スタートアップ 三国志(1)〜エコシステムを構築するBAT〜

今回は百度(バイドゥ)についてです。三国志で乱暴に例えると蜀でしょうか。一番弱いものの、諸葛孔明という絶対的な逆転の切り札を持っています(結局逆転はできませんでしたが・・・)。では百度(バイドゥ)にとっての諸葛孔明はなんでしょうか?それを紐解いてみます。

 

百度(バイドゥ)の事業

 

検索サービス中国国内シェアNo.1の百度(バイドゥ)の事業戦略を分析します。分析に当たって百度(バイドゥ)について簡単に触れておきます。

百度(バイドゥ)は李彦宏氏によって設立されました。李彦宏氏は北京大学を卒業後にニューヨーク州立大学へ留学、Dow Jones & Company, Inc.やInfoseekなどを経て中国帰国後の2000年1月にBaidu, Inc.を創業しました。サービス開始当初はグーグルのシェアが圧倒的でしたが、2002年にMP3検索ファイルを提供することでグーグルとの差別化に成功し、その後も急成長を続け、2005年5月ナスダックに上場しました。

日本への進出では、2006年12月に日本法人であるバイドゥ株式会社を設立。2007年3月には日本語版サイト「Baidu.jp」のベータ版サービスを開始しています。2008年1月23日に「Baidu.jp」の本格サービス開始し、2011年12月Andorid™日本語入力アプリケーションSimejiを事業取得しています[1]

 

百度(バイドゥ)の強みー検索エンジンと地図検索

 

図1 インターネット広告市場シェア(2015年度Q2)[2]

 

家田 卒論最終

 

中国国内での百度(バイドゥ)は圧倒的で、2015年Q2の中国インターネット広告市場において、3位のGoogle中国の9.2%と2位の阿里巴巴(アリババ)の26.5%を大きく引き離し、39.3%で首位です。

図2 地図検索サービス(2015年9月)[3]

 

家田 卒論最終 2

 

さらに地図検索サービス百度地図(バイドゥ地図)は「2015年第1季度中国手機地図用戸観測研究報告」によると、阿里巴巴(アリババ)系列でもあるシェア第2位高德地図(Gaode地図)のシェア20.1%を大きく引き離し、65.5%と圧倒的シェアです。

図3 検索エンジン市場シェア(2015年Q1)[4]

 

家田 卒論最終 3

 

中国検索エンジンのシェアにおいては、ほぼ独占での81.4%を占めています。3つのグラフから分かるように、検索に百度(バイドゥ)の強みがあるのが分かります。エコシステムでいうと、ユーザーの流入部分をおさえています。

 

百度(バイドゥ)のエコシステム

 

2015年9月時点で百度(バイドゥ)が提供するサービスは検索サービス以外に、オンライン旅行予約サイトなど66も存在します。[5]この66のサービスが百度(バイドゥ)が作るエコシステムと言えるでしょう。

百度(バイドゥ)の中心的位置を占めるサービスを見ましたが、検索エンジンと地図検索に圧倒的強みを持っていることが分かります。しかし、他の領域においては強いサービス持っていないのが現状であり、エコシステムをうまく構築できているとはいえないでしょう。

それは2014年4月時点での百度(バイドゥ)、阿里巴巴(アリババ)、腾讯(テンセント)のエコシステムの状況についてまとめた表を見ると分かりやすいです。

表 百度(バイドゥ)、阿里巴巴(アリババ)、腾讯(テンセント)各社のエコシステムの比較[6]

 

阿里巴巴(アリババ) 腾讯(テンセント) 百度(バイドゥ)
流入 地図 高德地図 搜搜地図 百度地図
検索 淘宝、天猫 搜搜 百度
SNS 新浪微博、来往 微信、QQ
コンバージョン 共同購入 美团、聚計算 QQ团購、高朋網 糯米网、百度团購
EC 淘宝、天猫 易迅网、QQ網购 百度汇
ライフスタイル情報 淘点点、口碑網、丁丁網 大众点评
配車 快的打車 嘀嘀打車
旅行 淘宝旅行 芸龍 去哪儿網
決済 決済機能 支付宝 微信支付 百度銭包
提携ディーラー 提携ディーラー 銀泰、美宜佳便利店等 王府井百貨、新世界百貨、海底捞等 地図上的餐飲、酒店商家等

※ 各社が強い領域に黒文字、フォントサイズ大きめで表記しています。

 

表を見ると、阿里巴巴(アリババ)と腾讯(テンセント)は自社のサービスもしくは投資・連携先でエコシステムをすべて包括していますが、百度(バイドゥ)は3つの領域をカバーできておらず、しかもそれはSNSとライフスタイル情報、配車というエコシステムを構築する上で極めて重要な部分であります。

百度(バイドゥ)がエコシステムの構築に遅れをとった理由として、基幹サービスが検索エンジンや地図検索など高い技術を利用したものであるために、技術寄りの人材が集まりビジネスサイドの人材の確保が阿里巴巴(アリババ)と腾讯(テンセント)に比べて遅れたのかもしれません。

しかし2015年になってからはエコシステムの構築にかなり力を入れています。2015年6月30日に発表したのが、3年以内に200億元を「百度糯米」に投資する構想でした。その後、クラシファイドサイト「百姓网」に出資したり、O2Oクリーニングe袋洗(Edaixi)の1億ドルの資金調達にリード・インベスターとして参加するなど、O2Oへの取り組みを加速させています。

O2Oを今から攻めたとしても、SNSと購買、決済で腾讯(テンセント)と阿里巴巴(アリババ)からシェアを奪回するのは容易ではありません。

 

百度(バイドゥ)の本当の強みー自動運転

 

ただ百度(バイドゥ)には他社にはない圧倒的な強みがあります。これはエコシステムの枠外から出るものであり、阿里巴巴(アリババ)と腾讯(テンセント)が最も恐れているであろう百度(バイドゥ)の事業であります。

それは、自動運転車です。自動運転車が凄いのは、都市計画を一から覆すくらいのインパクトがあります。Googleも同じように自動運転に力を入れていますが、そのインパクトはGoogle vs トヨタ 「自動運転車」は始まりにすぎない (角川EPUB選書)に詳しく説明されていますので、ご一読ください。

2015年12月に、百度(バイドゥ)は自動運転を3年以内に実現する計画があることを発表しています。

ここまで読み解くと百度(バイドゥ)の強さは、単なるインターネット事業そのものよりも、検索や人口知能などを活用した「予想」にあるのではないかと思います。

現在の百度(バイドゥ)の時価総額は約6.5兆円で、阿里巴巴(アリババ)の約25兆円と腾讯(テンセント)の約20兆円と比べると、ややもの足りません。しかし自動運転が現実のものとなれば、両社を超すポテンシャルは十分に秘めているのではないでしょうか。

 

まとめ

 

  • 百度(バイドゥ)は検索エンジン、地図検索に強い。
  • O2Oはかなり出遅れてた。
  • 2015年からはO2Oに力を入れて投資している。
  • 自動運転が腾讯(テンセント)も阿里巴巴(アリババ)も有していない最大の武器。

 

次回は、BATのA、阿里巴巴(アリババ)を考察します。

 

参考

[1] Baidu「会社概要」

[2] 易観智庫「易観智庫:2015年第2季度中国互連網広告運営商市場規模達532.4億元」

[3] bigdata「2015年第1季度中国手機地図用户監測研究報告」

[4] 艾瑞「2015Q1中国搜索引擎市場規模156.4億元」

[5] Baidu「Products」

[6] 人人都是産品経理「O2O生態系統解析」

[7] 日経BP LAP「インターネット広告ではインプレッション効果こそ大切

※図と表は参考資料を元に全て筆者作成。

※一部、桁の表記ミスがあり訂正しました。


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家田昇悟(IedaShogo)

家田昇悟(IedaShogo)

在学中に中国の日本酒コンサルティング会社で、営業・ECサイト立ち上げのリサーチを経験。帰国後、中国のスタートアップに特化した情報サイト「ChinaStartupNews」を立ち上げ、中国関連のリサーチやコンサルティングに従事する。中国×スタートアップに興味を持つ人が集うFBグループ(https://www.facebook.com/groups/chinastartup/)を運営し、現在参加者は800名を超える。アプリ開発企業にて勤務。