WeChatPaymentとAlipayはいかにしてキャッシュレス社会を築いてきたのか

にーはお!

凄い勢いで進む中国のキャッシュレス社会、既に想像の遥か上に到達」など、中国のモバイル決済が非常に注目を浴びている。

 

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筆者が上海に留学していた2012年はWeChatPaymentを街で見かけることはほとんどなかったが、2014年から急速に普及し、今は上海のほとんどの場所でWeChatPaymentが使えるようになった。

WeChatPaymentとAlipayがキャッシュレス社会の実現に向けて、どのような施策を展開したかを時系列で残しておきたいと思う。

 

Alipay

 

2003年10月18日にAlipayがTaobao向けにローンチされた。(※TaobaoはC2Cのプラットフォーム。実際は純粋なCではなくスモールBになっている。)

しかし、1年後の2004年にはTaobaoからAlipayを独立させ、Taobao以外のサイトを使用するユーザーにもAlipayを開放したのだ。2004年の買収から2015年までeBay傘下で成長してきたPaypalとは間逆である。

2005年には全額補償プログラムを開始し、インターネットで決済をすることの安全性を訴えた。

2008年にモバイル決済事業へ参入することを発表。より生活と密着した決済シーンにおけるAlipayのシェア拡大を目指す。日本ではおサイフケータイが2004年頃から普及し、2007年に1900万台普及していたことを考えると、Alipayのモバイルペイメント参入はやや遅めである。

2008年頃から外部との積極的な提携を行い、Alipayが使える場所を拡大した。まず攻めたのはオンライン旅行サイトで、2009年には中国国内TOP3の旅行サイトと業務提携を結ぶことに成功した。

2006年末にAlipay導入企業は30万社を達成。Alipayのローンチから僅か3年と少しでこれだけの提携サイト数を増やした。2009年の7月にAlipayのユーザー数は2億人を突破、12月にはAlipay導入企業は46万社を突破した。

日本において、ネット通販TOP200社で国内EC市場の約42%を占めることを考えると、Alipay導入企業46万社で中国におけるほとんどのオンライン取引をAlipayで完結できるようになっていたのではないだろうか。

2011年にはQRコード決済を開始し、オフライン決済に参入する。

 

WeChatPayment

WeChatは2011年、Foxmailの創業者である张小龙氏により立ち上げられた。(张小龙氏は中国屈指のプロダクト・マネージャーとして有名)

WeChatPaymentの正式リリースは2013年8月5日と、Alipayと比べるとかなり遅れての参入である。

WeChatPaymentが狙った領域はより接触頻度が高い、オフライン領域での決済だ。

接触頻度が高い領域をなぜWeChatPaymentは狙ったのか?Alipayは2005年から決済サービス展開しているにも関わらず、なぜこの領域を取っていなかったのか?

それは、接触頻度が高いデバイスつまりスマホが本格的に普及するのが、2013年になってからという外部要因が非常に大きい。2011年の中国のスマホ販売台数は8000万台。2014年には4.3億台のスマホが出荷され、上海では殆どの人がスマホを持っている状況になった。

スマホが本格的に普及するタイミングを見計らって、WeChatPaymentは決済領域に参入したと言えるだろう。

 

WeChatPaymentは日常生活に密着するアプリに積極的に投資を行い、そこでWeChatPaymentを使ってもらう戦略を取った。

以下はTencent(WeChatPaymentを提供する会社)の主要な投資先である。未上場ながら時価総額を数千億〜兆円をつけ、中国社会に急速に浸透していったアプリばかりだ。

 

フードデリバリーのEleme

中国版食べログのDianping

中国版UberのDidi

中国版AmazonのJingdong

レンタル自転車のmobike

フリマアプリのZhuanzhuan

ファッションコーマスのMeilishuo

 

そして、WeChatPaymentはただ出資して提携先を増やすだけでなく、投資先のDidiなどにクーポンを配布させ、決済サービスの代理戦争を担わせた。

下の表は、中国版UberであるDidiとKuaidiのクーポン施策の年表である。2014年1月に、WeChatPaymentの投資先であるDidiが、乗車したら運転手とユーザーに10元ずつ配るキャンペーンを実施した。上海の初乗りが14元であることを考えると、かなりの割引率だ。

Alipay陣営もこれに続けと、キャンペーンを行った。

両者は総額24億元(約410億円)を投下するなど、

 

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WeChatPaymentはさらに仕掛けた。クーポン・キャンペーンはAlipayにすぐに真似をされて競争優位がなくなったが、こちらはWeChatにしかない強みをうまく活用した。

それはSNSを使った、個人間送金市場の創出だ。

TencentはWeChat以外にQQなどチャット系サービスにめっぽう強い。一方、Alipayを運用するAlibabaも同じ事業でサービスを持っているが、Tencentには全く歯が立っていない。

レストランや映画などより日常生活と密接する決済シーンにおいて、個人間送金は非常に相性が良かった。お年玉もSNSと非常に相性が良く、またゲーム性も高く、たった1回で中国人にとっての習慣になった。

個人間送金市場が無ければ、WeChatPaymentはAlipayよりも速い成長を実現できなかっただろう。

 

個人の決済はWeChatPaymentが取りきりそうではあるが、Alipayはどのような施策を展開してくるのか、楽しみだ。


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家田昇悟(IedaShogo)

家田昇悟(IedaShogo)

在学中に中国の日本酒コンサルティング会社で、営業・ECサイト立ち上げのリサーチを経験。帰国後、中国のスタートアップに特化した情報サイト「ChinaStartupNews」を立ち上げ、中国関連のリサーチやコンサルティングに従事する。中国×スタートアップに興味を持つ人が集うFBグループ(https://www.facebook.com/groups/chinastartup/)を運営し、現在参加者は800名を超える。アプリ開発企業にて勤務。