中国スタートアップの資金調達トレンドを知るために把握しておきたい、2014年度のBAT重点投資領域

最近、BATによる投資合戦が白熱しています。

日本のメディアではなかなか報道されませんが、毎日のように未上場企業による数十億円規模の資金調達が中国では行われています。

しかし毎日のニュースをなんとなく見ていては全体のつながりが見えず、ただ「すごいな」とニュースを消費してしまうだけです。改めて2014年度のBATの投資を見ることで、日々のニュースの思考を深めるきっかけになれば幸いです。

※BATとはBaidu、Alibaba、Tencentの3社の略称です。

 

bat

 

BATの投資概要

 

BATのみで2014年度は270億ドルの投資を実行しています。日本の2014年度の未公開企業の資金調達が約1000億円であることを考えると(ジャパンベンチャーリサーチ調べ)、BATの投資規模がいかに大きいかが分かるかと思います。

 

Baidu、バイドゥ

投資概況

 

2013年度は17件、30億ドルの投資を実行し、BATの中で最大の投資企業でしたが、2014年度は15件15億ドルと、大幅な減額でした。

事業領域として教育分野がアリババとテンセントと比べて大きいですが、他に目立った特徴はありません。

買収そのものよりも、自社の技術力のために投資を行ったと考えられる2014年でしょう。その成果なのか、2015年下半期には自動運転自動車を発表すると言っています。

 

大公司单个版图-Baidu

 

投資領域

 

最も多かったのは教育系の4件の投資でした。続いてエンターテイメント系に3件の出資・買収。次に自動車・交通系に2件の投資。Uberに6億ドルの出資が2014年度の最大でした。

2014百度投资盘点-

Alibaba、アリババ

投資概況

 

2014年度、アリババは40件、金額にして170億ドルの投資を行いました。2013年度は22件、25億ドルの投資でしたので、この1年で案件数、金額ともに大幅な増加です。

アリババは電子商取引サイトとして発展しましたが、今はありとあらゆる業界内で自社サービスもしくは事業提携を結んでいる会社であり、まさしくアリババ帝国を形成しています。

 

大公司单个版图

 

投資領域

 

170億ドルの資金をアリババはいったいどこへ投資したのでしょうか?

アリババが2014年度に投資をした領域は、上から順にエンターテイメント10件(30億ドル)、EC6件(3億ドル)、モバイル3件(54億ドル)、ライフスタイル3件(30億ドル)、SNS3件(3.5億ドル)でした。

投資金額ではモバイルが54億ドルとダントツであるものの、エンターテイメントへの10件の投資は目を見張るものです。エンターテイメント事業を手掛ける「华谊兄弟传媒集团」、サッカーチームの「广州恒大足球俱乐部」、中国版Youtube「优酷土豆集团」、中国随一の経済メディアを持つ「21世纪传媒」などに投資を行い、コングロマリット企業にアリババは変貌しています。

アリババが明らかに、コンテンツを持たない「プラットフォーム」から、コンテンツを持つ「パブリッシャー」へと近づいているのが分かると思います。

そんなアリババの「プラティッシャー」化が一目てわかる2014年度の投資でした。

 

阿里巴巴-投资与并购

Tencent、テンセント

投資概況

 

2014年度は46件、70億ドルの投資。2013年度が24件、10億ドルの投資でしたので、案件数ではほぼ倍増、金額にして7倍もの増額になっています。

テンセントはQQとWeChatというチャット・アプリでモバイルで最強の地位を築いています。中国で友達と連絡を取るならWeChat。友達の近況を見る際もWeChatを使います。WeChatにいかに人を集めるか、その人をいかに活用するかというのが、テンセントの基本的な戦略です。

下の図で、水色のモバイルと、黄色のSNSが大きな面積を占めているのがその証拠です。つまりモバイルとSNSで更なるWeChatの強化またはWeChatからの莫大なトラフィックの流入を図っていくという戦略ですね。

 

tensent 大公司单个版图

 

投資領域

 

ゲーム3件(7億ドル)、ライフスタイルO2O 9件(23億ドル)、EC3件(6.5億ドル)、モバイル4件(9.5億ドル)、エンターテイメント3件(6.5億ドル)の分野が投資案件、投資金額ともにテンセントの2014年度の投資領域TOP5となっています。

投資金額の30%を占めるライフスタイルO2O分野への投資が圧倒的に目立ちます。

クラシファイドサイトの「58同城」に計3ラウンドで合計8.6億ドルの出資を行い、24%の株を保持。さらに10億ドルの時価総額を誇る、中国版食べログの「大众点评」の株も20%保持しています。

上の図で述べたように、ライフスタイルO2O分野へのテンセントの集中的な投資はWeChatとのシナジーをいかに高めるかという1点に尽きると思います。

アリババはエンターテイメント事業の投資を行い、「プラティッシャー」化していますが、テンセントは周辺企業を集約していくことでさらに「プラットフォーム」としての力を強くしていく、そんな戦略の違いが2社の投資先から見て取れます。

ゲーム分野への投資も目立ちます。ゲームでの売り上げはテンセントの主要な収入ですが、国内2件、国外7件の投資を実行しています。

中国EC第二のシェアを占める「京東」へ2.4億ドルの出資を実行するなど、アリババの対抗馬とも抜け目なく連携しています。

 

腾讯  2014年度投資

まとめ

 

いかがでしたでしょうか?

バイドゥは研究開発に重点を置き、アリババはコンテンツの投資に走り、テンセントはWeChatを軸にしたO2Oエコシステムを作り上げるため様々な領域の企業に投資をしていました。

以上がBAT各社の重点投資領域であります。しかし重点分野でなくとも投資額・案件共に絶対数では大きく、実際はすべての分野で競争していると言えます。

2014年度の状況が分かると、2015年度の日々の資金調達の情報も繋がって見えてくるでしょう。

資金調達の裏にあるBATの思惑が分かってくると、中国のスタートアップのダイナミックをより堪能できること間違いなしです。

 

参考、画像:IT桔子2014年度盘点系列(1):BAT+3M巨头的布局(TABLE派系)

IT桔子2013年度互联网创业投资盘点(1):BAT+3M的投资收购大战

BAT启蒙网络理财,易贷微理财叫板移动金融

中国の百度がグーグルを追い抜く?BMWと自動運転車を共同開発

ライフスタイルO2O分野への23億ドルの投資で、WeChatのさらなる「プラットフォーム」化を進めるテンセント #中国スタートアップ・エコシステム No.7

中国スタートアップ・エコシステムを明らかにしていくこの企画。過去、「中国VC&エンジェル投資ファンドのランキングTOP10(2014年度)」やTOP3のVCの投資領域の分析を行ってきました。今回はTable帝国の分析ということで、アリババに続きテンセントの2014年度の投資を見ていきます。

 

  • テンセントの投資概況

 

2014年度は46件、70億ドルの出資・買収を行いました。2013年度が24件、10億ドルの出資・買収でしたので、案件数ではほぼ倍増で、金額にして7倍もの増額になっています。しかし公開されていない情報も含めると、2013年度は200件以上の投資を行っていたそうです。テンセントはQQとWeChatというアプリ・チャットでモバイルで最強の地位を築いています。中国で友達と連絡を取るならWeChat以外はありえず、友達の近況を見る際もWeChatを使います。WeChatにいかに人を集めるかというのが、テンセントの基本的な戦略でしょう。下の図で、水色のモバイルと、黄色のSNSが大きな面積を占めているのがその証拠だと思います。

 

tensent 大公司单个版图

 

  • テンセントの投資領域

 

ゲーム3件(7億ドル)、ライフスタイルO2O 9件(23億ドル)、EC3件(6.5億ドル)、モバイル4件(9.5億ドル)、エンターテイメント3件(6.5億ドル)の分野が投資案件、投資金額ともにテンセントの2014年度の投資領域TOP5となっています。投資金額の30%を占めるライフスタイルO2O分野への投資が圧倒的に目立ちます。クラシファイドサイトの「58同城」に計3ラウンドで合計8.6億ドルの投資を行い、24%の株を保持。さらに10億ドルの時価総額、中国版食べログの「大众点评」の株も20%保持しています。上の図で述べたように、ライフスタイルO2O分野へのテンセントの集中的な投資はWeChatとのシナジーをいかに高めるかという1点に尽きると思います。アリババはエンターテイメント事業の出資・買収を行い、「プラティッシャー」化していると前回の記事で述べましたが、テンセントは周辺企業を集約していくことでさらに「プラットフォーム」としての力を強くしていく、そんな戦略の違いが2社の投資先から見て取れます。

ゲーム分野への投資も目立ちます。ゲームでの売り上げはテンセントの主要な収入ですが、国内2件、国外7件の投資を実行しています。自社ECサービスの育成も行うかと思いますが、アリババに次ぐアマゾン型ECの「京東」へ2.4億ドルの出資など外部との連携を強めています。

 

腾讯  2014年度投資

 

  • テンセントの投資ステージ

 

シードが4件、シリーズAが13件、Bが7件、Cが10件、Dが1件、Fが1件、IPO後が7件、買収が2件、戦略投資が3件とアリババ(シリーズAが9件、Bが9件、Cが2件、Dが3件、Fが1件、IPO後が6件、買収が6件、戦略投資が2件)に比べると、アーリーステージでの出資が多いのが分かります。

 

※テンセントの投資先一覧

 

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参考、画像:IT桔子2014年度盘点系列(1):BAT+3M巨头的布局(TABLE派系)

IT桔子2013年度互联网创业投资盘点(1):BAT+3M的投资收购大战

2014年の投資分野から見るBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)の事業戦略の方向性

bat 画像

 

BATとは、Baidu、Alibaba、Tencentの頭文字をとったものです。

2014年の投資分野から、BATの事業戦略の方向性が見えてきます。

 

まずはBAT3社の2014年の投資額です。

BAT 投資額2014年

 

TencentとAlibabaが頭一つ抜けています。3社で約180億ドルとは・・・

 

次は投資国の分布です。

 

BAT 投資国

 

国内が70%を占めています。日本は残念ながら1件だけです。

 

次は投資ステージ。

BAT 投資ステージ2014年

Tencentがアーリーステージでの投資を積極的に行っているのが分かります。

 

ではBAT3社のそれぞれの投資分野を見てみます。

 

baidu 投資分野 2014年

検索サービスであるBaidu。教育分野で投資が多かったが、その真意は?

 

 

ネット決済サービスやネットのモールを展開しているAlibaba。

 

alibaba 投資分野2014年

圧倒的なプラットフォームを持つものの、コンテンツを持っていないのが、Alibabaです。エンターテイメント分野に最大の8件を投資しているのは、自らのプラットフォームにコンテンツを組み込んでいきたい姿勢でしょうか。

 

WevChatというLINE中国版や、オンラインゲームを展開しているTencent。

Tencent 投資分野2014年

 

Alibabaがエンターテイメント分野に8件を投資したのとは対照に、Tencentは2件しか投資していません。一方O2Oに8件、強みであるオンラインゲームに8件もの投資をしています。チャットアプリのWeChatといかに連動させるか、ゲーム事業で他社の追随を許さない姿勢が読み取れます。

 

 

ざっとですが、2014年のBATの投資分野を振り返ることで、今後の事業の方向性を見てみました。BATから出資を受けた日本企業は1社だけでしたが、2015年出資を受ける企業は出てくるのでしょうか。注目です。

 

参考: “BAT”2014年度投资/并购图谱(http://www.huxiu.com/article/105702/1.html)

原文執筆者:逐鹿网

引用画像:逐鹿网

 

中国投資のプラットフォーム「投資界」

投資の情報提供からコンサルまでこなす清科グループ傘下のメディア「投資界」。

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投資界

 

流入経路を見ると、

 

投資界-2

バランスが取れています。

「投資界」のグループ会社である清科グループは1999年に設立し、中国のベンチャーキャピタルやプライベート・エクイティ産業における総合サービスのリーディングカンパニーとして不動の地位を築いています。下の画像からも分かるように、情報だけではなく、資産管理も行っており、メディア以外で収益を上げていることが伺えます。他の事業を展開後メディアを設立していることからも、オウンドメディアとしての役割が強い可能性が高い。

清科

清科学-2

 

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新芽

 

メディアがグループ会社の傘下として機能している典型的な例です。Webメディアだけでは収益は立ちませんが、他のコンサルティングや資産運用などと合わせて運営することで、うまく機能させています。

 

メディアが業界でどの位置に属するのかは国によって変わってくると思うので中国のメディア業界の全体像にも引き続き注目したいです。